行政への提言

「災害時の動物救護に関する提言書」の骨子(案)

飼い主との同行避難をすることができず、警戒区域内を放浪する犬たち(提供:二階堂利枝氏)
飼い主との同行避難をすることができず、警戒区域内を放浪する犬たち(提供:二階堂利枝氏)

【序文】

2011年3月11日に発生した東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故においては、ペットが飼い主と「同行避難」できなかったことが主な原因となり、被災地域や避難区域のペットが多数命を落とし、行方不明になりました。また生き延びることができたペットも、多くはいまだに飼い主と離ればなれで暮らしています。飼い主がやむなく手放したケースも少なくありません。

災害時には、何よりも人命が優先されるべきですが、近年、ペットは家族の一員であるという意識が一般的になりつつあり、ペットと同行避難をすることは、動物愛護の観点のみならず、被災した飼い主の安全や健康、心のケアの観点からも重要であると考えられるようになりました。また、被災動物を放浪状態のまま放置することを防ぎ、避難所や応急仮設住宅でのペット管理体制を整備することは、咬傷事件や感染症を予防する観点からも重要であり、ペットの飼い主のみならず、ペットを飼っていない方も含めたすべての人に有益であると考えられます。

 

このような状況を受けて、環境省は2012年8月29日の法改正で、動物愛護管理法に災害時の動物救護に関する項目を盛り込みました。また2013年6月には災害時におけるペットの救護対策ガイドライン(以下、ペット救護ガイドラインと記述)を発行しました。このガイドラインで、ペット同行避難を前提とした災害時の動物救護対策が各自治体に対して具体的に示されたことは、日本のペット防災における歴史的な一歩であると言えます。また今回の大震災やペット救護ガイドラインの発行を機に、動物救護・ペット防災について先進的な取り組みを始めた自治体や獣医師会も出てきました。

しかし、ペット防災への取り組みは自治体によって大きな温度差があり、先進的な取り組みをしている自治体においてさえも、その取り組み内容が市民に広く周知されているとは言いがたい状況にあります。首都直下型地震や南海トラフ巨大地震の脅威が現実味を帯びたものとなり、また福島の原発事故においては、他の自治体への避難を余儀なくされたことなどを考えると、日本全国において均一かつ高レベルなペット防災体制の構築が急務であると考えます。

 

この提言書は、ペット救護ガイドラインの内容を踏まえ、先進的な取り組みを行っている行政や獣医師会の事例を参考にして作成いたしました。特に行政の施設や人員までもが被災するような大規模災害においても機能する、より実践的かつ具体的なペット防災の体制構築について、都道府県および市区町村に対して提案させていただきます。

◆前提事項

本提言書は、ペット救護ガイドラインP.1~6「総説」に書かれている内容を前提に作成いたしました。用語については、P.5「本ガイドラインにおける用語解説」に基づいています。以下、特に重要と思われる6つの前提事項を記述いたします。

 

1.対象となる「ペット」の定義

2.飼い主の安全の優先について

3.「自助/共助/公助」について

4.飼い主が果たすべき役割について

5.災害の種類について

6.行政の業務分掌について

 

●1.対象となる「ペット」の定義

この提言書における「ペット」とは、動物愛護管理法における「家庭動物等(*)のうち主に犬及び猫などのペット」を指すものとします。ただし、動物愛護管理法の対象となる家庭動物以外の動物(「展示動物」「産業動物」「実験動物」)についても、災害時の動物救護についての対策を早急に講ずるべきと考えます。

 

*家庭動物等の飼養及び保管に関する基準

(改正 平成19年11月12日環境省告示第104号)

第2 定義

この基準において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1)動物

哺乳類、鳥類及び爬虫類に属する動物をいう。

(2)家庭動物等

愛がん動物又は伴侶動物(コンパニオンアニマル)として家庭等で飼養及び保管されている動物並びに情操の涵養及び生態観察のため飼養及び保管されている動物をいう。

 

[参考]

動物愛護管理法の対象となる動物(環境省「動物の適正な取り扱いに関する基準等」より)

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/baseline.html

 

●2.飼い主の安全の優先について

飼い主とペットが安全に避難するためには、まず飼い主自身の安全を確保することが大前提となります。災害が起こった時に飼い主がペットと一緒にいるとは限らないこと、やむを得ずペットを自宅に残して避難せざるを得ない状況もあること、また不測の事態によりペットとはぐれてしまうケースもあることを想定する必要があり、それらの場合においては、飼い主の安全が最優先されるべきと考えます。

 

●3.「自助/共助/公助」について

防災対策・災害対応を考えるうえで重要な概念に「自助/共助/公助」があります。

 

自助:自分や家族、ペットの身は自分たちで守る

共助:近隣住民や地域の人たちが互いに協力し、助け合う

公助:国や都道府県、市区町村などの行政機関や公的機関による対応

 

この概念は、阪神淡路大震災以降注目されるようになりました。阪神淡路大震災では、多くの方が倒壊家屋等の下敷きになりましたが、助かった方の内訳は以下の通りでした。

(出典:(社)日本火災学会「兵庫県南部地震における火災に関する調査報告書」)

 

自助(自力で/家族に):66.8% 

共助(友人、隣人に/通行人に):28.1% 

公助(救助隊に):1.7%

(その他:0.9%) 

 

上記の調査結果から、災害発生直後においては「自助・共助」が極めて重要であること、また「公助」がほとんど期待できないことがわかります。このような現実を踏まえると、災害発生直後のペット防災における行政機関や公的機関の最も重要な役割は、平時において「災害時に自助・共助が有効に行われるような体制作りを行うこと」であると考えます。

また仮設住宅でのペット同居など、災害発生からある程度時間が経過した後のペット防災の課題についても、「自助・共助」が基本であることに変わりはありません。

 

●4.飼い主が果たすべき役割について

この提言書により提案するペット防災の体制が有効に機能するためには、ペットの飼い主が、「飼い主としての責任」を十分果たしていることが前提となります。また平常時も災害時も、「飼い主としての責任」に違いはありません。

[参考]

ペット救護ガイドラインP.7~8「飼い主の役割」

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/01.pdf

 

玄海原発の事故を想定した福岡県のペット同行避難訓練(提供:船津敏弘氏)
玄海原発の事故を想定した福岡県のペット同行避難訓練(提供:船津敏弘氏)

●5.災害の種類について

原子力災害(原子力発電所の事故)については、地震・津波・火山爆発などの自然災害とは大きく異なる状況(広大な避難区域が設定される、避難生活が長期に渡る等)が発生します。東京都の多くの自治体は、過去の災害を参考にして被災規模想定をパーセンテージで設定し、防災計画を策定していますが、原発事故では、避難区域に指定された地域の住民のほぼ100%が避難生活を送ることになります。指定避難所以外の避難所が数多く立ち上がり、また避難区域への立ち入りや物品(ペットを含む)の持ち出しが厳しく制限されることになります。本ガイドラインは、原子力災害にもできうる限り対応できる内容にしたいと思います。

<参考> ペット救護ガイドラインP.12~13「災害時の動物救護対策に係る法律等の整備状況①災害対策基本法」

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/01.pdf

※平成23年12月に災害対策基本法に基づく「防災基本計画」の改定が行われました。動物救護対策に関しては、自然災害対策の各編に避難場所及び仮設住宅における家庭動物の受け入れ配慮に関する記載が追加されるとともに、原子力災害対策編に避難場所における家庭動物の受け入れ配慮に関する記載が追加されました。

 

●6.行政の業務分掌について

ペット防災業務については、都道府県と市区町村でそれぞれ役割分担があります。基本的には動物愛護管理業務は都道府県が行い、避難所の運営は市区町村が行っています。しかし東京都の特別区、政令指定都市、中核市は保健所を独自に設置できることから、動物愛護管理業務も(都道府県とは別に)独自に行っている場合がほとんどです。その他の市町村においては、動物愛護管理業務を独自には行っていない場合も多いです。このような行政内の業務分掌を考慮して、実効性のある提言を作成します。

<参考> ペット救護ガイドラインP.9~10「自治体の役割」

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/01.pdf

◆提案内容

行政に提案する事柄は大きく分けて3種類を考えています。

 

1.「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン(環境省)」に基づく実施計画の策定

2.今後起こりうる大規模災害を想定した備えの充実

(1) 平時における市民への啓発活動

(2) 行政が動けない発災直後においても自律的に動物救護活動が行える体制作り

(3) 災害に巻き込まれた動物たちのレスキュー

(4) 避難する人間とペットとの同行避難(一時避難)

(5) 仮設住宅でのペットとの同居について

●1.「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」に基づく実施計画の策定

[提案事項]

・2013年に環境省より発行された「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」は、あくまでも指標であり、それ自体に実効性や拘束力はありません。各自治体がそれぞれの地域性を考慮して、このガイドラインに基づいた実効性のある実施計画を策定していただくことを提案します。

2.今後起こりうる大規模災害を想定した備えの充実

(1) 平時における市民への啓発活動

[提案事項]

・ペットの災害への備えに関する飼い主への普及啓発を行うにあたり、所有者明示の必要性、「しつけ」の必要性、避難用品や備蓄品、ペットとの同行避難が可能であること、同行避難の時の注意点、避難所でペットを飼養する時の注意点などを具体的に記述した市区町村独自のペット同行避難ハンドブックを作成し、飼い主に配布していただくことを提案します。特に避難所の運営方法については市区町村ごとに異なるため、市区町村ごとに作成することを推奨します

・ペットとの同行避難を含めた避難訓練を定期的に実施し、飼い主に参加をうながしていただくことを提案します。

・動物愛護推進員等の制度を活用して、地域のペット防災コーディネーターを育成していただくことを提案します。

[参考]

ペット救護ガイドライン「ペットの災害対策に関する飼い主等への普及啓発」P.2338

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/02.pdf

東日本大震災の津波被災地における、民間団体による動物救護のようす(提供:二階堂利枝氏)
東日本大震災の津波被災地における、民間団体による動物救護のようす(提供:二階堂利枝氏)

(2) 行政が動けない発災直後においても自律的に動物救護活動が行える体制作り

[提案事項]

・緊急災害時の動物救護における各セクター(飼い主、行政、獣医師会、市民団体など)の役割分担を明確にし、行政が機能不全に陥っても、他のセクターが協力しあって自律的に動物救護活動が行えるような体制作りを行っていただくことを提案します。

 

 行政の施設や職員までもが被災するような大規模災害においては、災害発生から当面の間、行政は動物救護についての対応が極めて困難になることが、今回の東日本大震災・原発事故で明らかになっています。このような現実を踏まえると、ペット防災における行政機関や公的機関の最も重要な役割は、災害時に直接動物救護活動を行うことではなく、「災害時に行政が機能不全に陥っても、飼い主、行政、獣医師会、市民団体などが協力しあって自律的に動物救護活動が行えるような体制作りを行うこと」であると考えられます。具体的には、避難所において後述のペット防災リーダー(災害時ペット管理ボランティア)や飼い主が自律的にペットの管理を行えるフローを整えること、獣医師会や後述のVMAT(災害派遣獣医療チーム)、民間の動物愛護団体などが独自の判断で被災動物のレスキューを実施できる権限を与えること、などが上げられます。

 

[参考]

福岡県獣医師会および福岡VMAT(災害派遣獣医療チーム)の動物救護体制(資料提供:船津敏弘氏)

福岡VMATが参加して行われた、福岡県総合防災訓練におけるペット同行避難訓練(提供:船津敏弘氏)
福岡VMATが参加して行われた、福岡県総合防災訓練におけるペット同行避難訓練(提供:船津敏弘氏)

(3) 災害に巻き込まれた動物たちのレスキュー

[提案事項]

・自治体と地方獣医師会に、緊急災害時の動物救護協定を締結していただくことを提案します。

・更に一歩踏み込んだ施策として、地方獣医師会を中心とした「災害派遣獣医療チーム(VMAT)」(※)を結成すること、また自治体(都道府県・市区町村)とVMATとで緊急災害時の動物救護協定を締結していただくことを提案します。

 

[参考]

「災害派遣獣医療チーム(VMAT)」とは、獣医師を中心に、動物看護師、トリマー、動物訓練士、動物保護団体などの専門家により構成される緊急災害時の動物レスキュー・チームのことです。東日本大震災をきっかけに、福岡県で日本発のVMATが発足しました。獣医師はあくまでも獣医療の専門家であり、被災動物保護の専門家ではありません。被災動物の捕獲や保護、保護した後のトレーニングやトリミングなど、多岐に渡る専門スキルが必要となる被災動物レスキューには、VMATの結成が望ましいと考えます。

<福岡VMATについて>

https://www.facebook.com/yurumaji

 

[課題]

・現時点では、災害に巻き込まれた動物をレスキューしなければならない法的根拠が無いため、VMATのような動物レスキュー・チームが結成されるか否かは、現状ではそれぞれの獣医師会トップのモチベーションや、自治体の首長の熱意に左右されると考えられます。VMAT普及のためには、災害に巻き込まれた動物のレスキューを義務化する法律の整備が必要になると考えられます。

・都市部の獣医師は獣医師会への加盟率が低いため、VMATに参加する獣医師や動物病院の数も限られてしまいます。また獣医師会に加盟していないが、動物愛護やペット防災に関する活動を積極的に行っている獣医師も多く、このような方にどのように参画を促していくかが、VMATを実効性のある組織にするためのポイントになると考えられます。

原子力災害における避難区域への立入りについては、国の許可が必要なため、実現のためには、やはり災害に巻き込まれた動物のレスキューを義務化する法律の整備が必要になると考えられます。

 

ペットの受け入れがスムーズに行われた新潟市内の避難所(提供:新潟動物ネットワーク)
ペットの受け入れがスムーズに行われた新潟市内の避難所(提供:新潟動物ネットワーク)

(4) 避難する人間とペットとの同行避難

ペットとの同行避難については、多くの自治体が「原則として可能」という方針を打ち出しています。しかし、その方針が市民や避難所の運営者に十分に周知されていないと思われる場合も見受けられます。災害が発生した時に、避難所においてスムーズに同行避難が行われるためには、市民や避難所運営者への平時からの啓発・周知活動が必須であると考えます。

また、特に避難所におけるペット受け入れについては、避難所の立地条件などにより受け入れ体制も異なってくることが予想され、様々な状況に対応するためには、避難所の運営者向けの詳細なマニュアルが必要になると考えられます。

 

[提案事項]

・全ての避難所は原則としてペット受け入れ可にすること、また各避難所において、スムーズにペットを受け入れるための方策を平時から考えておくことを提案します。

・同行避難とペット受け入れに関する避難所マニュアルを作成し、各避難所の責任者に平時から配付しておくことを提案します。

・市民向けのペット同行避難ハンドブックを作成し、ペットの飼い主とペットを飼っていない方の双方に周知することを提案します。

・市民ペット防災リーダー(災害時ペット管理ボランティア)を養成し、各地域に配置することを提案します。市民ペット防災リーダーは動物に関する専門家に限らず、行政や飼い主、関連団体の間に入って様々な事柄を調整できる能力のある人物が望まれます。

・大規模災害時に立ち上がるであろう指定避難所以外の避難所については、「同行避難とペット受け入れに関する避難所ガイドライン」が行き渡っておらず、ペットが受け入れられない可能性があります。このような避難所については、「市民ペット防災リーダー」がイニシアチブを取って、できるかぎりペットが受け入れられるように尽力することを提案します。

 

[参考]

ペット救護ガイドライン「災害発生時の動物救護対策 [2]避難所・仮設住宅におけるペットの飼育 (1)避難所におけるペット同行避難者の受け入れ」P.60~68

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/03.pdf

・練馬区では、ペットとの同行避難の方針を、区民向けに極めて明確に打ち出しています。

 https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/bosai/jishinsonae/hinankyoten.files/pet.pdf

・新宿区では、区民向けのペット同行避難ハンドブック「いざという時に災害からペットを守るために」を作成し、配布しています。

 http://awn.sub.jp/cn/snj/hinan/08snjsaig.pdf

・新宿区では「新宿区学校避難所 動物救護マニュアル」を作成し、平時より避難所の責任者等に配布しています。マニュアル本体の他に、実際の作業に使用する各種資料(様式)も整備されています。

 http://awn.sub.jp/cn/snj/hinan/10.3snjhinan.pdf

【マニュアルP.9に掲載されている各種資料】

 1 動物救護用資材一覧表 資料1

 2 動物救護活動報告(要請) 様式1

 3 保護動物受付簿 様式2

 4 動物施療カルテ 様式3

 5 保護動物台帳 様式4

 6 保護動物調査表 様式5

 7 保護動物診療記録簿 様式6

 8 保護動物移動記録簿 様式7

 9 失踪動物の捜査依頼受付簿 様式8

 10 ボランティア申込書・登録用紙 様式9

 11 避難所ペット登録カード 様式10(飼い主同行動物用)

 12 動物保護記録カード 様式11(飼い主同行動物用)

・練馬区では既に「災害時ペット管理ボランティア」の募集を行っています。

 http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/hoken/seikatsueisei/pet-bora.html 

南相馬市のペット同居型仮設住宅(提供:新潟動物ネットワーク)
南相馬市のペット同居型仮設住宅(提供:新潟動物ネットワーク)

(5) 仮設住宅でのペットとの同居

東日本大震災の仮設住宅においては、様々な形態でペットとの同居が行われています。完全室内飼育をルールとする仮設住宅、ペット同居化の区画と同居不可の区画を分けている仮設住宅、厳密なルールを定めず、緩やかなルールでペットと同居している仮設住宅、敷地内に小規模なペットシェルターを設置している仮設住宅などがあります。一方で、ペットとの同居が認められていない仮設住宅もあり、またペットとの同居が認められた仮設住宅に住みながらも、様々な理由からペットと同居できていない方が多くいらっしゃいます。

仮設住宅の様々なペット同居形態の長所と短所を検証し、より多くの方がペットと同居できるよう、地域の飼育状況に応じて、柔軟に対応していくことが必要であると考えます。

 

(以下、ペット救護ガイドライン「災害に備えた平常時の対策、体制の整備(2)仮設住宅におけるペットとの同居」より抜粋)

東日本大震災では、多くの自治体において仮設住宅でのペットの飼育を可とする方針が示されたものの、実際にペットとの同居に結びつかなかった事例も多数みられた。その理由として、「他の入居者や仮設住宅の自治会での承認が得られなかった。」、「仮設住宅での飼育ルールとして挙げられた室内飼いの規則にそぐわない犬(大型犬、室内に慣れていない犬等)を飼育していた。」等があげられることから、地域の飼育状況に応じた仮設住宅でのペット受け入れ方針を検討する必要がある。これまでの災害時対応では、室内飼いをペット同居の条件とした例や、ペット飼育者専用の仮設住宅を設置した例、仮設住宅の近隣にペット飼育施設を設置した例があった。鳴き声や糞尿等、仮設住宅において想定されるトラブルと地域の状況を考慮して、仮設住宅でのペットの飼育ルールを検討する必要がある。

 

[参考]

ペット救護ガイドライン「災害発生時の動物救護対策 [2]避難所・仮設住宅におけるペットの飼育 (2)仮設住宅におけるペットとの同居」P.69~76

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/03.pdf

ペット救護ガイドライン「災害に備えた平常時の対策、体制の整備 [2]避難所・仮設住宅におけるペットの受け入れ配慮 (2)仮設住宅におけるペットとの同居」P.42~43

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/02.pdf

仮設住宅に併設されたペットシェルター(福島県郡山市)
仮設住宅に併設されたペットシェルター(福島県郡山市)

 

[提案事項]

・仮設住宅の集落内に、必ずペットとの同居が可能な区画を作ることを提案します。

・「ペットとの同居に関する仮設住宅ガイドライン」を作成し、ペット同居の具体的な方法について明文化することを提案します。

・仮設住宅の集落ごとに、敷地内に小規模なペットシェルター(動物飼養のためのブース、ペットコテージ)を作ることを提案します。飼い主の住居の室内やすぐ外で飼養できる「しつけ」を施された犬や猫はそれぞれの飼い主の元で飼養し、それ以外の犬や猫をペットシェルターで飼養することを想定しています。

・仮設住宅の集落ごとに、ペットの飼い主を中心とした連絡会を設置することを提案します。仮設住宅でのペット飼養に関するルール等を自主的に作成・運用し、またペットを飼っていない方との相互理解を深めることを目的とします。

 

[参考]

既存の被災動物シェルターにおいては、以下のような課題があります。仮設住宅内に小規模ペットシェルターを設置することにより、これらの課題を解決できると考えられます。

・シェルター運営のために、長期に渡る人員や経費の確保が必要になる。

・飼い主の住居から離れているため、飼い主が頻繁にペットに会うことが困難になる。このため、飼い主としての自覚が薄れてしまう恐れがある。また「たまに」会いに来られることが、ペットの精神面に好ましくない影響を与えることがある(ペットは、自分が置かれている状況を理解できずに精神的に不安定になる)。


(以上)