7/12に開催した標記イベントは、40名の参加者があり、盛況のうちに終了いたしました。ご参加くださった皆様、ご支援くださった皆様に、厚く御礼申し上げます。参加者の多くは既に動物愛護や防災の活動に携わっていらっしゃる方々で、動物愛護推進員の方、獣医師の方、地元で動物愛護活動をされている方、ドッグトレーナーの方、防災士の方などがいらっしゃいました。またこれから活動を始めようと模索している方にも、数多くご参加いただきました。
さて、今回のようなワークショップを含む長丁場のイベントは、基礎的な知識を学ぶ基調講演を行った後にワークショップを行うことが多いのですが、ゲストの平井先生と相談して、今回は敢えてその逆で実施しました。
理由は、まずは参加者の皆さんに実際の現場(避難所)をバーチャルに体験していただき、当事者としての問題意識を持っていただいた上で専門的な話をした方が、「自分ごと」として咀嚼・吸収できるのではないか、と考えたからです。
[実施のステップ]
Step.1 自分の関わり方を想像する(ワークショップ)
↓
Step.2 他の人の考えを聞き、価値観の幅を広げる(ワークショップ)
↓
Step.3 専門家の話を聞き、正しい知識と俯瞰的な視野を獲得する(講義)
↓
Step.4 議論を行うことにより、疑問点を解消し、自分自身の課題整理をする(ディスカッション)
第1部のワークショップ「避難所におけるペット共存をコーディネートする」は、A~Fの6グループに分かれ、次のような内容で実施しました。
■ワークショップ「避難所におけるペット共存をコーディネートする」
[コンセプト]
大地震が発生し、ペットを連れて避難所へ。
「私の自治体はペット同行避難を推奨しているから安心!」
しかし避難所に到着してみたら…避難所の管理者はペット受け入れのノウハウも持たず、同行避難の可否が住民にも十分に周知されていなかったため、現場は大混乱。その時、あなたたち(一般の飼い主)はどのように行動しますか?
ペット防災の考え方が比較的浸透していると思われる東京都内でも、このような状況は十分に起こり得ます。避難所での困難な状況を具体的に想定し、その状況を乗り越えるための「行動」を皆で一緒に考えることにより、ペット防災の現場をリードする人に必要な条件とは何かを考えていただきます。
[タイムテーブル]
①ワークショップの流れと企画意図を説明(5分)長谷川/平井
②アイスブレーキング:他己紹介(12分)
グループ内で2人1組になり、お互いに取材しあい、所定の「他己紹介シート」に記入し、相手のことを紹介してもらいました。
・お互いに取材し「他己紹介シート」に記入(1分×2人=2分)
・取材した相手のことを紹介(1分×8人=8分)
③グループワーク(40分)
下記の≪前提条件≫を踏まえて、グループごとに模造紙、ワークシート、付箋紙などを使って、避難所でのペット共存に関する設問1~3について討議し、まとめてもらいました。
≪前提条件≫
[災害の種類]
首都直下型大地震/最大震度6強/23区内の多くの建物が全半壊/死者・行方不明者は数千人規模/火災被害あり/津波被害なし/よく晴れた日曜日の午後2時に発生
[舞台]
23区内の指定避難所(学校)
[状況]
その区では地域防災計画上「ペットとの同行避難を推奨」とされているが、各指定避難所の運営者や飼い主、区民には、それが十分に周知されていない。避難所の運営マニュアルには、動物のためのスペースをどこにするか明記されておらず、またペット用の備蓄も無い。
■設問1(15分)
a.「動物と一緒に避難してきた飼い主」役、b.「動物嫌いな避難者」役、c.「避難所の運営管理者」役に分かれて(各2人ずつ)、
(1) a.b.c.それぞれで自分たちの「主張したいこと」を考え、ワークシートに書き出してください。(5分)
(2) 3者の「主張したいこと」を見せ合い、それを元に、ペットが同行避難してくる避難所で起こりうる具体的な問題は何かを考え、書き出してください。(10分)
■設問2(10分)
設問1での討議内容を踏まえ、避難所の運営管理者として、避難所となる学校の見取り図を見て、ペットや飼い主のためのスペースを何処にするか決めてください。
■設問3(10分)
動物と一緒に避難してきた飼い主によるペットスペース自主運営グループとして、避難所でペットと共存するためのルール5箇条を作ってください。
④発表(33分)
各グループ5分でグループワークの内容を発表してもらいました。
[各グループの発表ポスター]
[ワークショップ記録動画]
全グループ、見事に発表ポスターを完成させることができました!時間があまりない中、内容が盛りだくさんだったにも関わらず、皆さんさすがに普段からこの問題を考えている方が多いだけあって、現実的・実践的な内容になっていました。
[各グループの発表内容まとめ]
Aグループ Bグループ Cグループ Dグループ Eグループ Fグループ
休み時間を挟んでの第2部は、ゲスト講師の平井潤子先生による講義「ペット防災に求められる人材とは?」です。講義の前半は、第1部ワークショップの講評から。実際の被災地での事例をふんだんに盛り込んで、お話しいただきました。
※上映資料写真の無断転載および無断引用は、固くお断りいたします。
平井先生が代表を務めるNPO法人アナイスは、13年前からペットとの同行避難を推進してきましたが、「“同行避難”と“同居”は違う。参加者の皆さんの議論を聞いて良いなと思ったのは、住み分けや、導線を分けましょう、と言った動物が苦手な方への配慮が、皆さんの中に浸透してきている。」と評価してくださいました。情報共有の大切さ、地域による飼い方の差への配慮、発災直後の避難所は混乱していること、「リーダー」と「コーディネーター」に求められることの違い、飼い主明示の必要性、動物救護活動に携わる人々の心情への配慮など、実体験に即したコメントをいただきました。
同行避難を支援するための視点についても、飼い主と動物それぞれについて整理してお話しいただきました。そしてもう一つ大事なポイントは、同行避難=避難所への避難とは限らない、ということです。状況によっては、自宅にとどまること、また新しい「共助」の形として、近所の家での共同飼育という可能性も考えて欲しいとのお話でした。
そして、私(長谷川)からの要請に応えて、行政の役割、市民セクターの役割、獣医師界の役割、今後の課題などを、「簡潔に説明できるものではない」とおっしゃりながらも、非常に分かり易くお話しいただきました。
※各セクターの役割についてのスライドを以下にまとめました。
※上映資料写真の無断転載および無断引用は、固くお断りいたします。
[行政]
[獣医師会/動物病院]
[NPOなどの市民セクター]
※上映資料写真の無断転載および無断引用は、固くお断りいたします。
第3部の「全体ディスカッション(質疑応答)」では、以下のような質疑応答が行われました。
参加者:自分は防災士として活動している。防災士自身が、ペット防災に関する知識を持っている人が少ない。ペットに関する具体的な情報を提供してくれる人・団体はいるのだろうか?たとえば爬虫類などの同行避難はどうするのか、など。
平井先生:アナイスがまさにそれである。できることとできないことを整理することが大事。たとえば温度管理が必要な爬虫類などは避難所で受け入れるのは不可能なので、飼い主さん同士の共助、エキゾチックアニマルを販売している店などとの共助を検討してもらうのが良い。人間の安全のための活動であるという視点からの整理も重要。動物と一緒に避難できないために飼い主さんが危険な場所に残ったり連れに戻ったりする、というリスクを考えれば、同行避難できるという対策は必要なのだ、という人の視点での普及啓発というのがあると思う。ペットを飼っているために、飼ってない人が受けられる恩恵(安全な場所に避難する、物資をもらう)を受けられない、ということが無いようにするという風に考えてもらえれば良い。
参加者:自分の住む地域の避難所において、ペット防災について自分が「陣頭指揮を執ります」と言ってしまっていいものか?
平井先生:避難所の運営協議会などがある。立候補して入っていけるものではない。飼い主さん同士の共助グループを作る、というところからスタートする、というのは良いと思う。また自治体に対して、飼い主さんからこういう要望がある、ということを伝えていく必要はあると思う。
参加者:自分は東京の市部に住んでいるが、住民の多くは都心に通勤しているため、災害が起こった時にすぐに帰れなくなる、ということが想定されている。家に他の家族がいればよいが、いない場合の対策はどうしたら良いか?また平日の多くの時間を過ごす職場などでは、どのような対策をすべきか?
平井先生:動物に特化して考えることではなく、まず人の防災を考えて、そこに動物の防災ということをくっつけていくことなのかな、と思う。たとえば地震であれば、家が壊れないようにする、部屋で事故が起こらないようにする、という地震対策からスタートする。そこにいる子どもやおばあちゃんにとって安全な場所は、ペットにとっても安全な場所である、ということになる。家が無事で火災さえ起こらなければ、帰宅までに2日かかったとしても、普段から水を多めに用意しておくなどすれば良い。日本人は抵抗があるかもしれないがトイレのドアを少し開けっ放しにして水飲み場にする、というようなペット対策もある。またトイレは狭い空間に柱が4本あるため丈夫で、その中に逃げ込めば安全である。
自宅の防災対策に加えて更に「共助のしくみ」を考えると良い。災害が起こった時、留守中の家のようすを見に行くということをお願いできるような仲間作りができれば、その中でサポートし合える。マンションであれば、管理組合と協議してペットを飼っている世帯の台帳を作って、普段は留守であることがわかれば、その留守宅のペットに対して、そのマンションのペットの会でサポートする、といったことを考えてもらえればと思う。ただ、個人情報を教えたくない、という方もいる。そういうペットの会に入りたくないという飼い主さんも多い中で、普段から仲良くする中でメールアドレスの交換などをしていれば、誰かが改めて個人情報を集める必要もない。そういった仲間づくりを検討していただければと思う。
(質疑応答は以上)
3回にわたって実施してきた「ペット防災“わたしとあなたにできること”ミーティング」は、しばらくお休みさせていただきます。当面は「災害時の動物救護に関する提言書」の作成および行政への提案に向けた検討を進め、また今回のミーティングの内容を元にして、ペット防災の人材養成プログラムを作って行きたいと考えております。情報はこのWEBサイトやFacebookページで随時報告して参ります。今後も引き続き、当プロジェクトの活動を応援していただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
「犬と猫と人間と2」"わたしとあなたにできること"プロジェクト
代表 長谷川 潤
収支報告のページをご参照ください。
※参加者募集の記事をそのまま掲載しています。
これからご自分の地域やコミュニティでペット防災体制を築いて行こう!と考えていらっしゃる方を対象とした参加型イベント第3弾です。今回はペット防災の普及啓発をミッションとするNPO「アナイス」の平井潤子さんをゲストにお招きいたします。
≪ねらい≫
参加者の皆さまに、ペット防災において自分たちが目指すべき「人材像」を明確にイメージしてもらい、地域やコミュニティへのかかわり方を具体的に考えていただくことにより、自らの地域やコミュニティのペット防災において中心的な役割を担っていただくための素地を作っていただきます。
Step.1 自分の関わり方を想像する(ワークショップ)
↓
Step.2 他の人の考えを聞き、価値観の幅を広げる(ワークショップ)
↓
Step.3 専門家の話を聞き、正しい知識と俯瞰的な視野を獲得する(講義)
↓
Step.4 議論を行うことにより、疑問点を解消し、自分自身の課題整理をする(ディスカッション)
≪プログラム≫
●ワークショップ「避難所におけるペット共存をコーディネートする」
(ファシリテーション:平井潤子さん・長谷川潤/90分)
大地震が発生し、ペットを連れて避難所へ。
「私の自治体はペット同行避難を推奨しているから安心!」
しかし避難所に到着してみたら…避難所の管理者はペット受け入れのノウハウも持たず、同行避難の可否が住民にも十分に周知されていなかったため、現場は大混乱。その時、あなたたち(一般の飼い主)はどのように行動しますか?
ペット防災の考え方が比較的浸透していると思われる東京都内でも、このような状況は十分に起こり得ます。避難所での困難な状況を具体的に想定し、その状況を乗り越えるための「行動」を皆で一緒に考えることにより、ペット防災の現場をリードする人に必要な条件とは何かを考えていただきます。
●講義「ペット防災に求められる人材とは?」
(平井潤子さん/90分)
ペット防災の普及啓発をミッションとするNPO法人アナイス代表の平井潤子さんより、ペット防災において市民が担うべき役割と、必要とされる人材像について、過去の災害時や実際の自治体の事例も絡めてお話いただきます。
●全体ディスカッション(質疑応答)
(コメンテーター:平井潤子さん、進行:長谷川潤/30分)
≪ 開催概要≫
■日時
2015年7月12日(日)
12:30~16:30(12:00開場)
■会場
日能研西日暮里校
(JR山手線・京浜東北線、東京メトロ千代田線「西日暮里駅」徒歩5分)
■ゲスト
平井潤子さん(特定非営利活動法人アナイス 代表理事)
進行:長谷川潤(「犬と猫と人間と2」“わたしとあなたにできること”プロジェクト)
■スケジュール(案)
※変更する場合があります
・主旨説明・ゲスト紹介
(長谷川/10分)
・ワークショップ「避難所におけるペット共存をコーディネートする」
(ファシリテーション:平井さん・長谷川/90分)
・休憩10分
・講義「ペット防災に求められる人材とは?」
(平井潤子さん/90分)
・休憩10分
・参加者とのディスカッション(質疑応答)
(コメンテーター:平井潤子さん、進行:長谷川潤/30分)
■対象
ペット防災の普及・促進に関わる方、これから関わりたい方
■参加費
1000円(当日会場でお支払いいただきます)
■定員
50名
■申込み
こちら(WEB入力フォーム)からお申込みください。