実施報告

ペット防災“わたしとあなたにできること”ミーティング 第2回

「災害派遣獣医療チーム“VMAT”作っちゃいました!~福島から福岡へ、そして東京へ~」

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雑感

4/19開催の標記イベントは、30名の参加者があり、盛況のうちに終了いたしました。ご参加くださった皆様、ご支援くださった皆様に、厚く御礼申し上げます。参加者は、獣医師の方、獣医師を目指す学生の方、動物愛護推進員の方、トリマーの方、地元で動物愛護活動をされている方、これから活動を始めようとしている方など、多岐に渡りました。

前半の「話題提供」では、まず福岡VMAT発起人の船津敏弘先生から、VMATを立ち上げるに至った経緯と「VMATとは何か?」というお話をしていただきました(【配布資料1】VMAT作っちゃいました参照)。船津先生は2011年7月に「福島警戒区域動物救援獣医師チーム(VAFFA311)」の一員として福島原発事故の警戒区域に取り残された犬・猫の救助活動を行いました。その時の人間がいなくなって4ヶ月が過ぎた街を飼い主さんからの捜索願を手に歩き回りました。2日間で50頭ほどの犬猫を保護しましたが、いくつもの白骨化した動物の遺体を見ると、もっと早く救護活動ができればとたいへん悔しく感じたのです。」という想いが、やがてVMAT構想につながって行くことになったそうです。以下、福岡VMATの基本活動方針です。

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1.発災より48時間が最重要phaseと考え、新たに専門的な教育を受けた動物救護班であるVMAT(災害派遣獣医療チーム)を設置する。

2.平常時にさまざまな災害を想定したシミュレーションを行い、それをもとに日常の訓練を行う。

3.平常時よりVMAT、協力動物病院、協力獣医師、協力動物看護師などを登録し、お互いの認知および教育・訓練を行うためのシステムを作る。

4.行政による被災動物救援対策本部が設置され機能し始めれば、これと協力して働く。

5.県や市町村との事前協定を結んでおく。

 (phase:フェィズ、時相。災害からの時間経過)

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その次に、東京でのペット防災対策充実を目指す2人の実践者、「高円寺ニャンダラーズ」代表の佐藤洋平さんと、獣医師の太田快作先生に、その想いを語っていただきました。杉並区高円寺でライブハウスを経営する佐藤さんは、震災以前は動物の保護活動とは無縁の生活を送っていましたが、福島県の原発事故警戒区域に多くの動物たちが取り残されていることを知り、(自身が福島県の出身ということもあり)ライブハウスに集うお客さんの有志と一緒にレスキューチーム「高円寺ニャンダラーズ」を結成します。その後、救うべき対象(猫)は、福島だけでなく地元・杉並にも数多く存在することに気づき、2014年より、福島でのレスキューのみならず地元での保護・TNR活動も行う団体へと方向転換します。

佐藤さんは福島でレスキュー活動を行う中で、「動物たちがなぜ取り残されたのか?」を考えるようになり、またそれは地元東京でも十分起こり得ることである、という考えに行き当たります。福島で起こったことから得られた教訓をちゃんと東京に活かさないと、自分たちの活動が無駄になるのではないか?という思いから、VMAT結成を目指す決意をします。

獣医師の太田先生は、北里大学獣医学部に非公認サークル「犬部」を作り、保護活動を始めます。現在はご自身で開業した「ハナ動物病院」獣医師として、また犬猫の殺処分ゼロを目指すNPO法人ゴールゼロの副理事長として、動物たちを助ける活動をしていますが、「目の前に助けを必要としている動物がいれば、助ける」というシンプルなスタンスは、学生時代から一貫していて変わることはありません。被災動物に関わる活動もその延長線上にあるものです。弱い存在を救おうとしない社会に対する憤りを強く感じていらっしゃり、今も東日本大震災・原発事故の被災動物に関わり続けていると、まだこの問題が終わっていない中でこれから起こる災害の対策を考えることに躊躇を覚えてしまうそうです。VMATについては、福岡のVMATをそのまま東京につくるのではなく、その地域にどんな問題があり、何が必要なのかを把握した上で、その地域に見合ったVMAT作りを目指すべき、というスタンスです。

後半のワークショップは、5~6人ずつの5グループ(A~E班)に別れ、それぞれのグループを仮想のVMATに見立てて、東京で大地震が発生した時の急性期(発災後48時間まで)を時系列順に5つのフェィズに分け、それぞれのフェィズにおける行動を考えてもらうという内容です。

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[プログラム内容]

(1)ワークショップの流れ説明(5分)

(2)アイスブレーキング:他己紹介(10分)

グループ内で2人1組になり、お互いに取材しあい、所定の「他己紹介シート」に記入し、相手のことを紹介してもらう。

・取材お互いに取材し「他己紹介シート」に記入(1分×2人=2分)

・取材した相手のことを紹介(1分×6人=6分)

(3)グループワーク(30分)

「発災直後」「3時間後」「6時間後」「24時間後」「48時間後」に関して、それぞれ想定される状況を示し(【配布資料2】ワークショップお題シート)、各グループで、その状況にどのように対応するかを討議し、模造紙にまとめてもらう。

・説明とグループ内での役割決め(5分)

・各時間帯の状況についてのディスカッション(5分×5回=25分)

(4)発表(20分)

各グループ3分でグループワークの内容を発表してもらう。

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偶然ですが、参加者の中に獣医師さんがちょうど5人いらっしゃったため、各班に1人本物の獣医師さんがいるというリアルなチーム編成となりました。また他のメンバーも普段からペット防災に関わっていらっしゃる方が多数いたため、実際の被災現場でも通用しそうな現実的な提案が出されて、福岡VMAT発起人の船津先生も驚かれていました。ワークショップでの各グループの討議内容は、VMATワークショップまとめをご参照ください。

最後のディスカッションでは、ワークショップの振り返りから始まり、福岡で上手くVMATを立ち上げられた理由や、日本中のVMATをとりまとめる「日本VMATネットワーク」などに話が及びました。

 

VMATについては、2013年9月1日(防災の日)に船津先生をお招きして、東京で福島動物ゆるマジ会 vol.5「福島から福岡へ、受け継がれた教訓~原発事故警戒区域レスキューと福岡VMAT(災害派遣獣医療チーム)~」を開催していました。この時はまだ福岡VMATは産声を上げたばかりでした。あれから1年半、VMATを取り巻く状況は大きく変わりました。福岡VMATは福岡県と緊急災害時の協定を結び、研修会を重ね、現在は41名の隊員(獣医師27名、動物看護師14名)を擁するまでになりました。大阪では、まもなく大阪府獣医師会による「大阪VMAT」が誕生します。学問(獣医学)の世界では、「災害獣医療学」という学問分野を日本でも設立すべく検討が進められています。そして船津先生も発起人として名を連ねている災害動物医療研究会(JAVDM)では、VMATの全国展開を見据えた研修プログラム作成を進めています。このプログラムが完成すれば、県の獣医師会のような大規模な単位でなくても、研修を受け必要な要件を満たせば、VMATを作ることが出来るようになると考えられます。

このような状況の中、首都直下型地震の危機が迫っているとされる東京では、何をすべきなのでしょうか?前回のペット防災ミーティング第1回でもお話したように、東京はペット防災について先進地域と言うことが出来ると思います。自治体のペット防災意識も概して高く、殆どの自治体がペットとの同行避難を可としています。しかし、その自治体の方針も、ペットの飼い主さんに周知されているとは言い難い状況です(ペットを飼っていない方への周知については言わずもがな)。東京都獣医師会による「東京VMAT」結成のみならず、地域密着の小さなVMATをたくさん作り、獣医師さんや動物保護団体、地域住民などが平時から協力し合って防災に関する情報提供や啓発活動をしていく必要があると感じました。そしてワークショップで参加者の皆さまから出された実践的な意見の数々を見て、それを可能にする潜在能力を東京は持っている、と確信しました。 

獣医師を中核にしたレスキューチームVMATは、日本のペット防災において、「自助」「共助」「公助」のうち「共助」の力を強化するのに欠かせない存在になり得ると思います。これからも継続的にVMAT普及のためのお手伝い・啓発活動をして行きたいと思います。


ペット防災“わたしとあなたにできること”ミーティング第3回は、7月の開催を目指して現在内容の検討を進めています。これからも、実践で役立つ、このミーティングでしか得られない「何か」を得られる場として、このミーティングを継続実施して行きたいと思います。


「犬と猫と人間と2」"わたしとあなたにできること"プロジェクト

代表 長谷川 潤

配布資料

収支報告

収支報告のページをご参照ください。

実施概要

≪ ゲスト≫

船津敏弘さん(獣医師/ハーレー動物病院 相談役/福岡県獣医師会 理事
太田快作さん(獣医師/ハナ動物病院 院長/特定非営利活動法人ゴールゼロ 副理事長)

佐藤洋平さん(高円寺ニャンダラーズ 代表)

進行:長谷川潤(「犬と猫と人間と2」“わたしとあなたにできること”プロジェクト)

福島第一原発事故の被災動物レスキューに参加したことをきっかけに、日本ではじめて「災害派遣獣医療チーム“VMAT”」を作った福岡の獣医師・船津敏弘さんと、同じく福島でのレスキューに携わり、船津さんの活動に感銘を受けて「東京にVMATを作りたい!」と熱望する東京杉並のお二人、獣医師の太田快作さんと「高円寺ニャンダラーズ」代表の佐藤洋平さんをお招きして、「VMATの作り方」を考えます。

福岡では県の獣医師会が「福岡VMAT」を作りましたが、VMATは都道府県の獣医師会でなくても、もっと小さい単位でも作ることができると船津先生は言います。当日はグループに分かれて仮想のVMATを結成し、東京で大きな地震が起きたことを想定したワークショップも行います。

 

----(以下、船津敏弘さん作成の資料より抜粋)-----------------

福岡県の原子力防災訓練で、聴診するVMAT獣医師と保定するVMAT動物看護師
福岡県の原子力防災訓練で、聴診するVMAT獣医師と保定するVMAT動物看護師

「VMAT(Veterinary Medical Assistance Team:災害派遣獣医療チーム)とは獣医師、動物看護師、動物トレーナー、トリマーなど1チーム4〜5名で構成され、大規模災害や多くの傷病動物が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48 時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた獣医療チームのことです。災害時には人命救助を妨げない範囲で、初期の動物の保護・救出にあたるとともに、災害状況の情報収集を行います。また、避難所やシェルターにおける動物の健康管理及び人間と動物の関係を円滑にすることを主な任務とします。災害発生時にはVMAT だけではなく、各種シェルターやそれを支える協力獣医師、そして自らの入院施設などを提供して被災動物を保護する協力動物病院などの獣医師はもとより、動物看護師やトレーナー、そしてトリマーなどの動物に関連する専門職の協力、さらには熱意と行動力を持ってその活動を支える動物愛護に関連する団体や一般のボランティア、人命を助ける救助犬など、さまざまな方向性を持った多くの協力が重要となります。そしてそれを調整し指揮する実戦部隊がVMATの役目でもあります。 」

 

■日時
2015年4月19日(日)12:30~16:30(12:00開場)
■会場
日能研西日暮里校

(JR山手線・京浜東北線、東京メトロ千代田線「西日暮里駅」徒歩5分)

■プログラム(案)

※変更する場合があります

・話題提供1「災害派遣獣医療チーム“VMAT”作っちゃいました!」

 (船津敏弘さん/50分)

話題提供2「高円寺で“VMAT”作っちゃいます

 (太田快作さん・佐藤洋平さん/50分

(休憩5分)

・ワークショップ「みんなで“VMAT”を作ろう」

 (出演者・参加者全員/85分)

(休憩5分)

・ディスカッション福岡の、東京の、それぞれの“VMAT”

 (船津敏弘さん・太田快作さん・佐藤洋平さん・長谷川潤/40分

■対象
ペット防災の普及・促進に関わる方、これから関わりたい方
■参加費
1000円(当日会場でお支払いいただきます)
■定員
50名