これまでの活動の総括について

 私たち「『犬と猫と人間と2』“わたしとあなたにできること”プロジェクト」は、2013年、ドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」(監督:宍戸大裕さん)の封切りをきっかけに活動を開始しました。

この映画を見て、「東日本大震災と福島原発事故による被災動物の現状を知ったけど、でも自分が何をすればよいか、何ができるのかが分からない」と迷い悩む人多くの方々がいました。そんな人たちと一緒に「自分たちにできることを考える場を作ろう」と、映画の制作サイドの方々と一緒に実施したイベントが、「トーク&ワークショップ わたしとあなたにできること~『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』を観たあとで~」です。

このイベントを実施したことにより、多くの方との新たなつながりができ、私たち自身の「できること」も広がりました。当初はこのイベント1回きりで完結するつもりでしたが、2つ目のイベントとなるトークイベント「福島の『犬と猫と人間』は、今…~被災した動物たちと飼い主の“これから”を考える~」を、「LYSTA~動物たちに光と再生を。」様と共催で福島県いわき市で開催する話が持ち上がり、これを機に、継続的なプロジェクトとして実施していく決心をいたしました。

 

そして、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva様および、特定非営利活動法人SORAアニマルシェルター様と共催で開催したトークイベント「福島に学ぶ『東京の備え』、東京に学ぶ『福島のこれから』~行政と共に進める大災害時のペット防災~」を契機に、行政(東京都と福島県)に対して「災害時の動物救護に関する提言書」を作成・提出することを目指し、そのための情報収集と勉強会も兼ねて、主に被災動物の救護活動に関わる方を対象とした「ペット防災”わたしとあなたにできること”ミーティング」を3回にわたって開催しました。しかし、様々な専門家の皆さまと意見交換を行う中で、また時間経過による状況変化を鑑みて、行政に対して提言を行うことの実効性について、私たちの中で迷いが生まれてきました。地方自治体のおかれている状況は千差万別で、都や県に対して提言を行ったとしても、それが本当にペット防災の実施主体となる市区町村に、有効な形で行きわたるのだろうか…。東日本大震災を機に国(環境省)が作成したすばらしいガイドラインも、法的強制力を持つには至らず、各自治体のモチベーションにゆだねられ、残念ながら全国的に浸透しているとは言い難い状況にあります。このような状況のもと、私たちの力不足もあり、「災害時の動物救護に関する提言書」の提出については、断念せざるを得ませんでした。

 

しかし、多くの方々に支えていただいた結果として私たちのプロジェクトに蓄積された成果を、何らかの形で皆さまに還元したいと考えております。つきましては、これまでに私たちが実施してきたイベントや作成した資料を整理してアーカイブ化いたしました。イベントの様子を記録した動画や、議事録、配布資料などは、これらの情報を必要としている方に自由にお使いいただきたいと考えております。

 

2016年4月の熊本地震により、飼い主による「自助」の重要性があらためてクローズアップされるようになりました。そしてこれを契機に、環境省の「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」が改訂される見通しとなり、「人とペットの災害対策ガイドライン」としてリニューアルされることになりました。ペット防災の体制整備については、今も着実に前進を続けています。

このような状況のもと、私たちが残した足跡が、ペット防災の普及啓発や、今後起こるかもしれない災害時の被災動物救護に、少しでもお役に立にてることを願っております。

そして、支援者の皆さま、イベントに参加者してくださった皆さま、共催団体の皆さま、講師の先生方、アドバイスをくださった先生方、その他プロジェクトを支えてくださったすべての方々に、厚く御礼申し上げます。

 

2019年2月1日

『犬と猫と人間と2』“わたしとあなたにできること”プロジェクト

代表 長谷川 潤

行政への提言(案)について

私たちは、トークイベントの中で出されたご意見、皆様からいただいたご提案なども参考に、福島県・東京都およびこれに属する市区町村に対して「災害時の動物救護に関する提言書」を作成し、提出することを目指しましたが、前述のような理由で、提言書の提出につきましては断念いたしました。しかし多くの方々にご協力いただきながら作りあげた提言書の骨子(案)には、ペット防災の今後を考える上で重要な要素が数多く盛り込まれていると自負しております。例えば「2.今後起こりうる大規模災害を想定した備えの充実」で言及させていただいた「災害派遣獣医療チーム(VMAT)」につきましては、2016年春の熊本地震における福岡VMATの活躍を契機に、災害動物医療研究会の尽力もあり、実際に全国に広がる動きが出てきています。
つきましては、私どもがまとめた『災害時の動物救護に関する提言書』の骨子(案)を、あらためて公開させていただきたいと思います。ペット防災に関わる皆さまにとって、何かしらの参考になれば幸いです。

「災害時の動物救護に関する提言書」の骨子(案)

活動の記録とアーカイブ

私どもが実施してきた計6回のイベントについて、その内容や成果が一覧できるようにまとめました。出演者の了解をいただいているものにつきましては、イベントそのものを動画で見ることができるようにしております。また②③のトークイベントにつきましては、内容を完全にテキスト化した議事録もございます。
イベントの配布資料につきましては、ご自由にお使いいただきたいと思います。

※無断改変は固くお断りいたします。改変を行った上での使用をご希望の方は、こちらまでご連絡いただけますと幸いです。

※営利目的での使用はお断りいたします。

特に⑥のペット防災ミーティング第3回「ペット防災に求められる人材とは?~人・地域・行政を結ぶ『共助』の要(かなめ)~」につきましては、前半のワークショップ「避難所におけるペット共存をコーディネートする」が、地域のペット防災をになう人材育成のためのプログラムとなっております。詳細な実施方法やワークシートなどのツールもアップしてありますので、ぜひご活用ください。

①トーク&ワークショップ「わたしとあなたにできること~『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』を観たあとで~」

映画を観た人、映画を作った人、映画に出てくる人たちが思いを語り合い、経験を分かち合うことにより、参加者全員がそれぞれの「できること」を見つけ、あるいは作り出し、実践していくことを目指しました。何かをやらなきゃ!と思っているけれど、何をしたら良いかわからずに悶々としている方、既に被災動物問題に関わり、具体的に行動している方、そして、映画の中に出てくる、被災した動物たちを助けようと行動している方々。そんな人たちが一堂に会して、東日本大震災の被災動物問題についてそれぞれが「できること」を真剣に話し合いました。

日 時:2013年6月30日(日)12:30~15:45
会 場:三茶しゃれなあど(世田谷区民会館別館)5階「オリオン」
参加者:93人

映画の特設サイト

映像アーカイブ
【出演】
 宍戸大裕さん(「犬と猫と人間と2」監督)
 飯田基晴さん(「犬と猫と人間と2」)
 阿部智子さん(「アニマルクラブ石巻」代表)
 岡田久子さん(「やまゆりファーム」代表)
 菅野利枝さん(「SORA」代表)
 鈴木理絵さん(「LYSTA~動物たちに光と再生を。」代表)
 吉沢正巳さん(「希望の牧場」代表)

②トークイベント「福島の『犬と猫と人間』は、今…~被災した動物たちと飼い主の“これから”を考える~」

東日本大震災および原発事故から約3年。しかし原発事故の避難区域には今なお、多くのペットが取り残されています。また避難生活が長引くにつれ、犬や猫と暮らす被災飼い主さんにも、様々な困難が降りかかってきています。このイベントでは、原発事故の避難区域で被災動物の保護や給餌活動をしている方、また被災した飼い主さんをお招きして、被災動物問題の当事者の「生の声」をお伝えしました。

日 時:2014年2月23日(日)11:00~16:00
会 場:いわき芸術文化交流館アリオス「中劇場」
参加者:115人

共 催:LYSTA~動物たちに光と再生を。

映像アーカイブ1_トークイベント

映像アーカイブ2_出演者の紹介:千代田信一さん(福島県双葉郡双葉町)

映像アーカイブ3_出演者の紹介:LYSTA 鈴木理絵さん(いわき市)

映像アーカイブ4_出演者の紹介:高橋のり子さん(福島県南相馬市)

映像アーカイブ5_出演者の紹介:ちーむぼんぼん・もるさん(相馬郡飯舘村) 

議事録(PDF/503KB)

【出演】
宍戸大裕さん(「犬と猫と人間と2」監督)
鈴木理絵さん(「LYSTA~動物たちに光と再生を。」代表)
もるさん(相馬郡飯舘村より避難/「ちーむぼんぼん」メンバー)
高橋のり子さん(福島県南相馬市より避難)
千代田信一さん(福島県大熊町より避難)

③トークイベント「福島に学ぶ『東京の備え』、東京に学ぶ『福島のこれから』~行政と共に進める大災害時のペット防災~」

2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに続く東京電力福島第一原子力発電所の事故により大混乱に陥った福島県の動物行政。未曾有の大災害に遭遇した行政の現場で何が起こっていたのかを知ることをきっかけにして、今後ふたたび起こりうるであろう大災害に対応するために、市民と行政がどのように協力していくべきかを考えるイベントです。

日 時:2014年11月24日(月/祝)12:30~15:30
会 場:新宿区立 新宿文化センター 小ホール
参加者:170人

イベント実施報告

映像アーカイブ

講義録(PDF/545KB)

【出演】
藤谷玉郎さん(元・福島県食品衛生課 被災動物担当)
二階堂利枝さん(NPO法人SORAアニマルシェルター 代表理事)
高木優治さん(元・新宿区保健所衛生課管理係)
宍戸大裕さん(「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」監督)
渡辺眞子さん(作家/東京都動物愛護推進員)
杉本彩さん(女優/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 理事長)

④ペット防災ミーティング第1回「新潟県中越大震災と東日本大震災に学ぶペット防災のあり方」

新潟県中越大震災において動物救護の問題に直面した新潟県は、その経験を活かして、東日本大震災・原発事故の避難所においてペットの受け入れを積極的に行いました。一方東京では、これまでの大災害の事例を参考に、ペット防災対策の充実が進められてきました。 2つの大震災における動物救護の実態と、東京のペット防災の現状を知ることにより、自分たちが住まう地域のペット防災を見直すことを目指しました。

日 時:2015年2月22日(日)13:30~16:30
会 場:日能研西日暮里校

参加者:35名

イベント実施報告

■ゲスト

岡田朋子さん(新潟動物ネットワーク代表)
高木優治さん(NPO法人アナイス理事/元・新宿区保健所衛生課管理係) 

⑤ペット防災ミーティング第2回「災害派遣獣医療チーム“VMAT”作っちゃいました!~福島から福岡へ、そして東京へ~」

東京電力福島第一原子力発電所の事故の際、警戒区域での被災動物レスキューに参加したことをきっかけに、日本ではじめて「災害派遣獣医療チーム“VMAT”」を作った福岡の獣医師・船津敏弘さんと、同じく福島でのレスキューに携わり、船津さんの活動に感銘を受けて「東京にVMATを作りたい!」と熱望する東京杉並のお二人、獣医師の太田快作さんと「高円寺ニャンダラーズ」代表の佐藤洋平さんをお招きして、「VMATの作り方」を皆で考えました。

日 時:2015年4月19日(日)12:30~16:30
会 場:日能研西日暮里校

参加者:30名

イベント実施報告

映像アーカイブ1

映像アーカイブ2

■ゲスト

船津敏弘さん(獣医師/ハーレー動物病院 相談役/福岡県獣医師会 理事)
太田快作さん(獣医師/ハナ動物病院 院長/特定非営利活動法人ゴールゼロ 副理事長)
佐藤洋平さん(高円寺ニャンダラーズ 代表)

⑥ペット防災ミーティング第3回「ペット防災に求められる人材とは?~人・地域・行政を結ぶ『共助』の要(かなめ)~」

大地震が発生し、ペットを連れて避難所へ。「私の自治体はペット同行避難を推奨しているから安心!」 しかし避難所に到着してみたら…

避難所での困難な状況を具体的に想定し、その状況を乗り越えるための「行動」を皆で一緒に考えるワークショップを行い、ペット防災の現場をリードする人に必要な条件とは何かを考えていただきました。また、ペット防災の普及啓発をミッションとするNPO法人アナイス代表の平井潤子さんより、ペット防災において市民が担うべき役割と、必要とされる人材像について、過去の災害時や実際の自治体の事例も絡めてお話いただきました。

日 時:2015年7月12日(日)12:30~16:30
会 場:日能研西日暮里校

参加者:40名

イベント実施報告

映像アーカイブ(ワークショップパート)

■ゲスト

平井潤子さん(特定非営利活動法人アナイス 代表理事)